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- 2009.11.28 Saturday
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ソフトウェアの改変と損害賠償
- 2009.11.28 Saturday
- 著作権法
- 05:24
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
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1 ソフトウェアの改変と損害賠償
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東京地方裁判所平成19年3月16日判決
事案は次のとおりです。
フランスのソフトウェアメーカーA社は,製品設計や開発を最適化するための三次元作図に関するソフトウェアを開発,販売していました。
他方,デザインモデル等の製作会社B社は,自動車産業,電気産業,情報産業等の様々な業種の企業にデザインモックアップ試作品を製作,提供している会社でした。
本件で問題となったのは,A社のデジタルモックアップソフトウエア(以下「本件ソフトウェア」といいます。)でしたが,このソフトウェアは,多くのモジュールを収載しており,これらモジュールの使用については、モジュールごとに,A社から個別にライセンスを受ける必要がありました。
ところが,B社は,このライセンスを管理するプログラム部分(dllファイル)を改変し,ライセンスを受けていない部分のモジュールについても使用可能とすることで,ライセンスを受けずに,11台のコンピュータで,同時に,本件ソフトウェアを使っていました。
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2 判決の概要
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上記のように,本件ソフトウェア中のDllファイルについての改変行為により,11台の各コンピュータですべてのモジュールを使用でき,かつ,本件ソフトウェアを同時に使用できるようになったものであるから,B社の行為は,本件ソフトウェア全体に対する著作権(翻案権)侵害に当たる。
B社の行為によるA社の損害額は,11台につき使用可能となった本件ソフトウェア全体の使用許諾料相当額を算定し,それから実際の支払額を控除して算定すべきである。
以上から,裁判所は,B社に対し,15億8911万2875円の損害賠償の支払を命じました。
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3 解説
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判決によれば,B社は,本件ソフトウェアについては,初回ライセンス契約時に請求する基本ライセンス料4611万0200円と,基本ライセンス料の約14%である年間ライセンス料(647万8300円)をA社に支払っていました。ところが,B社は,この不正使用によって,約16億円という,非常に高額な損害賠償を行なうことになったわけです。
本件は,法律的には著作権(翻案権)侵害であるという判断については,大きな法律上の論点もなく,さほど問題があるケースではないと思われます。
B社は,「著作権法114条3項による損害額は,現実に使用したモジュールのみについて算定すべきである,また,B社がエンドユーザとして支払うべき金額(小売り価格)ではなく,A社が受けるべき金額(卸売価格)で算定されるべきであると主張しましたが,いずれも裁判所はあっさりと退けました。
本件は,高額な損害賠償が認められた例として,ソフトウェアを業務に使用する多くの企業にとって身が引き締まる事例となると思い,ご紹介しました。
書籍無断掲載と出版社の責任
- 2009.11.28 Saturday
- 著作権法
- 05:22
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
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1 書籍無断掲載と出版社の責任
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知的財産高等裁判所平成19年5月31日判決
事案は次のとおりです。執筆者B氏が,ある人物D氏の活動を紹介する書籍を執筆し,出版社C社がこれを出版しました。同書籍には,D氏のスナップ写真(本件写真)が使われていました。
本件は,このスナップ写真の撮影者A氏が,この書籍について,A氏が著作権を有する写真(本件写真)が無断使用されており,著作権(著作財産権及び著作者人格権)を侵害されているとして,C社に対し同書籍の印刷,頒布の差止と在庫の廃棄を,C社とB氏に対し損害賠償を求めました。
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2 判決の概要
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【結論】
裁判所は,著作権侵害を認め,書籍の出版差止等を認容するともに,出版社C社の過失も認め,損害賠償請求を認めました。
【理由】
理由の一部を取り上げます。
出版社C社は以下のように主張する。「執筆者B氏は,D氏と生前親交の深かったE氏に取材し,E氏から本件写真を入手し,かつ掲載の同意も得た。B氏は,E氏から,本件写真を自由に使ってよいと言われており,E氏に『この写真はあなたのものか。』と尋ねたところ,『そうである。』との答えを得た。また,B氏は,E氏に対して,本件写真の使用料についても尋ねたが,同人は不要であると答えた。E氏は,長年にわたり,雑誌の編集長を務めた出版関係者であった。」
この事実は当事者間に争いがあるが,「仮に,出版社C社が主張する上記事実が存したとしても,出版社C社と執筆者B氏は,本件写真の著作権者が誰であるかを確認し,その者から本件書籍への掲載について許諾を得る活動を全くしていないのであるから,過失があるというべきである。」
「出版社C社は,本件のような場合,あえて撮影者は誰であるかを詮索しないのが通常であると主張する。しかし,出版物に写真を使用する際に著作権処理をすることなくこれを使用することは考え難いところである。そして,撮影者が誰であるかが分からなければ,著作権者は判明せず,著作権処理をすることは困難であると考えられるから,本件のような場合に撮影者は誰であるかを詮索しないのが通常であるとは認められない。」
「また,出版社C社は,本件のような場合,撮影者を捜索して著作権処理をしなければ書籍等に掲載できないとすれば,自由かつ円滑な出版活動に大きな支障が生じ,自由闊達であるべき出版活動が萎縮してしまうことになるとも主張する。しかし,そもそも,出版物に写真を使用する際に著作権処理をすることは,出版物の著作者及び出版社にとって当然になすべき義務であるから,それをせずに大きな支障が生ずるとか,出版活動が萎縮してしまうなどとする主張が失当であることは明らかである。」
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3 解説
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出版社C社の主張は,上記のような事実に基づき,「一般人が日常生活のなかで特段の芸術的配慮なく人物を撮影するスナップ肖像写真を,ノンフィクションの対象となっている人物の風貌を読者に伝えるために書籍に掲載する場合には,肖像本人又は写真の所持者から同意を得れば,あえて撮影者は誰であるかを詮索しないのが通常であり,その詮索をしなかったからといって,一審被告らに出版に携わる者としての注意義務違反があるということはできない。」というものでした。
確かに,出版社C社の上記主張は,心情的には理解できなくもありません。
しかし,要約すれば,出版社C社の主張は,「第三者から提供されたスナップ写真の撮影者と著作権者についての確認は,写真の提供を受けた執筆者が,単にその写真の提供者に問いただしただけ」というものであり,ネガの所在確認等,それ以上の確認は行なっていない以上,過失がないという正当な法的主張とはなりにくかったと思われます。
本件は,事例判断ですからただちに一般化はできませんが,注意深い権利処理の必要性を認識させるものであると思われます。
不正競争防止法の虚偽の事実の告知の責任
- 2009.11.28 Saturday
- 不正競争防止法
- 05:17
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
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1 不正競争防止法の虚偽の事実の告知の責任
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東京地方裁判所平成19年12月26日判決
事案は次のとおりです。
生ゴミ処理機を製造,販売するX社が,同様に生ゴミ処理機を製造,販売するYに対し訴訟を起こしました。
X社の主張は,Y社が,X社の製品に関する虚偽の事実を,Y社の管理するウェブサイト上で表示し,また,X社やX社の製品に関する虚偽の事実を記載した書面をX社の顧客に交付した,これは,X社の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布であって,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たる,というものでした。
ちなみに,ウェブサイト上に表示した表示内容は,「この会社は弊社製品,生ゴミ処理装置,ゴミサーの偽造品を製造販売しています,ご注意をして頂きたい事を通知致します。」「この会社は弊社製品,生ゴミ処理機ゴミサーを偽造し販売しています」というものでした。
そのため,X社は,Y社に対し,上記のような書面の交付の差止,上記ウェブサイト上の表示の削除を求め,さらに,X社の信用等を害されたことによる無形損害3000万円の支払を求めました。
なお,本件については,代理店契約と競業禁止義務の効力という別のビジネス上の重要な論点もあります(もともとX社はY社の代理店でした)が,これは次号以降で取り上げたいと思います。
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2 判決の概要
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本件では,ウェブサイト上で掲載された内容(原告製品が偽造品である旨)の虚偽事実性が問題となりましたが,虚偽であると判断されました。
しかし,ウェブサイトの掲載については,訴訟の途中で表示が削除されていたため,差止の必要性が認められず,また,書面の交付については,X社の主張そのものが認められませんでした。それで,差止請求については認められませんでした。
他方,X社の信用の毀損については,100万円の損害額が認定されました。この根拠ははっきりませんが,ウェブサイト上の「表示の記載内容及び掲載期間(上記・・のとおり1年余であると認められる。)等の事情」からとされました。
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3 解説
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不正競争防止法2条1項14号は,競争関係にある他人の信用を毀損する行為を不正競争行為としています。
具体的な要件は以下のとおりです。
1 争いとなっている両者間に競争関係にあること
2 ある事実について告知又は流布行為があること
3 2の事実が虚偽であること
4 2の告知又は流布が他人の営業上の信用を害すること
したがって,例えば,ライバル会社,競争相手の取引先に対して,当該競争相手の商品についてネガティブなことを告げたり,ホームページ上で告知する場合は,十分な注意が必要です。例えば,よくある例としては,自社で特許権を持っており自社製品を製造しているとして,競争相手がその特許権を侵害した製品を製造又は販売しているように思える場合があります。
この場合,競争相手の取引先に対し,競争相手の製品が自社の特許権を侵害しているといったことを文書で告知したり,ホームページ上に掲載して告知したりした後,結果的に,裁判で特許権の侵害が否定されたり,又はその特許権が無効となった場合,場合によっては,この「特許権の侵害」という告知が不正競争行為として責任を問われる可能性があります。
そして,不正競争行為が認められた場合,不正競争行為を行なった者に対しては,
差止請求
信用回復請求(謝罪広告とか,取引先に対して謝罪文を発送させるなどの方法)
損害賠償請求
などの厳しい措置が認められることがあります。
したがって,競争相手に直接ではなく,競争行為の取引先へ何かを告知する場合などは,事前に必ず弁護士の助言を得ることは自社を守る重要なプロセスではないかと思います。
営業秘密の保護の要件(秘密管理性)
- 2009.11.25 Wednesday
- 不正競争防止法
- 02:05
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
訪問介護サービス事業を営むA社が,A社を退職したB,CがD社を設立して訪問介護サービス事業を営んでいることについて,BとCがA社の営業秘密である利用者名簿を不正に持ち出して使用しているとして,不正競争防止法に基づき,B,C,D社が,A社利用者名簿記載の者に対する営業活動を行うことの差止と損害賠償を求めた事案です。
B,Cは,A社に在籍中からA社の事業と同一地域での競業する事業の立ち上げを計画し,A社に登録しているヘルパーなどに,自社二登録するよう働きかけを行うなどをしていました。
本件で,問題となったのは,
1 介護情報の不正競争防止法上の「営業秘密性」
2 元従業員による営業活動の不法行為性
なお,同判決では,引き抜き行為にからむ,労働契約上の秘密保持義務,競業避止義務という別の興味深い論点もありますが,これは別の機会に取り上げる予定です。
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判決の概要
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【結論】
請求棄却(A社の請求を認めず)
【理由】
不正競争防止法上の「営業秘密」は「秘密として管理されている」ことを要するところ(不正競争防止法2条6項),事業者の事業経営上の秘密一般が営業秘密に該当するとは解されず,当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていること,及び,当該情報にアクセスできる者が制限されていることを要するとし,以下の事情から,秘密管理性がないと判断しました。
1)利用者名簿の電子データ及び紙媒体のいずれにも,当該情報,媒体自体及び収納場所に「部外秘」等の秘密であることを示す表示が何ら付されていない。
2)事務室の扉の施錠は防犯上当然行われる事柄にすぎない。
3)電子データへのアクセスは,専用のパソコンを使用しているが,パソコンを起動する際の簡易なパスワードが設定されているにとどまり,そのパスワードも広く社員に知られている。
4)紙媒体は,施錠することなくキャビネットに保管されていて,登録ヘルパーも,担当する利用者のファイルは,責任者の管理のもと,閲覧することができ,一部の書類は,事業所内から持ち出すことも認められていた。
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3 解説
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【営業秘密の3要件】
不正競争防止法上保護される営業秘密となるためには,以下の3つの要件が必要とされています。
1 秘密として管理されていること(秘密管理性)
2 事業活動に有用な情報であること(有用性)
3 公然と知られていないこと(非公知性)
多くの判例上問題となるのは,1の秘密管理性の要件であり,本件のように厳しい判断が出やすい部分です。
【秘密管理性の要件】
営業秘密の3要件のうち,中核的要件ともいえる秘密管理性について,判例は,以下の2要件を挙げています。
1 「秘密」の表示性(客観的認識可能性)
(例) 「マル秘」「機密情報」「取り扱い注意」などの表示を行う
2 アクセスの制限性
(例) 施錠した保管庫に入れてある情報
パスワードによるアクセス権の管理をしてあり,閲覧者の制限がされている
本件では,
1 施錠は事務所の扉だけであるが,これは防犯目的だけであった
2 情報に「部外秘」などの表示が無かった
3 PC上のパスワードは,簡易な上,スタッフは誰でも知っていた
4 紙媒体は登録ヘルパーなら誰でも閲覧可能
といった点から「秘密管理性」が欠けると判断されたものです。
また,この判決は,「従業員及び登録ヘルパーは,雇用契約上の秘密保持義務を負担し,A社は秘密保持に留意するよう指導教育を行ってきたのであるから,秘密管理性は認められる」というA社の主張に対し,「そのような雇用契約上の秘密保持義務や指導教育は,利用者のプライバシー保護を念頭においたもので,これによって不正競争防止法上の営業秘密性が直ちに導かれるものではない」と判断しました。
つまり,従業員に対する契約上の制限や教育指導だけでは,「秘密管理性」を満たさないわけです(もちろんこれらの契約や教育の重要性はいうまでもありませんが。)。
以上のとおり,判例上「秘密管理性」が認められるためには,法律上の要件を意識した,それなりの厳格な管理が必要であることを認識する必要があります。
【企業の営業秘密セキュリティ対策】
日本経済新聞社「知財Awareness 」
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/20060728.html
によれば,経産省が行った企業に対する調査について以下のような興味深い結果が示されています。
(以下引用)
「営業秘密の3要件(秘密管理性,有用性,非公知性)に関して,全回答企業の79%が「知っている」と答えたが,重要情報について「実務で適切な管理が実行されているか」との問いには,「管理が行われているものとそうでないものがある」との回答は全体の65%に及び,19%の企業は「要件を満たす管理がほとんど行われていない」と答えた。一方,「ほとんどすべての重要情報が管理されている」との回答は14%に留まった。
(引用終了)
以上のとおり,多くの企業では秘密管理性に関しては十分な対策がされているとはいえない状況にあります。
しかし,本件のようなケースで,A社は,残念ながら,自社と競業関係に立つ事業を,自社と同一の地域で始めることを計画し,自社在職中から,その準備に着手し,自社の登録ヘルパーに個別に連絡して自社に登録するように勧誘したBとCの行為を差し止めることができませんでした。
裁判所も,BとCの行為には「問題性のある行為」と述べ,A社の立場に一定の同情を示しましたが,法的にはA社の判断が認められるに到らなかったのです。この事例は,この事例は,面倒であっても,何かに備え,日常からの秘密管理の対策を行うことの重要
性を教えるものだといえます。
正露丸と不正競争防止法
- 2008.02.18 Monday
- 不正競争防止法
- 19:55
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
「ラッパのマーク」で知られる胃腸薬「正露丸」を製造,販売するA社が,名称と包装箱が酷似した薬を売るのは,不正競争防止法2条1項2号によって禁止される著名表示冒用行為又は同1号によって禁止される混同惹起行為にあたるとして,B社に対し,販売差止と損害賠償などを求めました。
A社とB社のパッケージは,A社が「ラッパのマーク」でありB社が「ひょうたんのマーク」であること以外は,色彩,「正露丸」の文字等,非常に似ているものでした。
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判決の概要
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【結論】
請求棄却(A社の請求を認めず)
【理由】
「正露丸」あるいは「SEIROGAN」の名称で本件医薬品の製造販売を行っている業者は,現在,原被告の他にも少なくとも10社以上存在し,その包装箱は,昭和30年ころから,一部の例外を除き,A社のパッケージと概ね共通する形状,色彩,「正露丸」の文字の色彩,配置等の特徴を備えている。
そのため,A社のパッケージは,「ラッパの図柄」及びA社の社名を除き,それ自体は特定の者の商品であることを識別させるに足りないものであるから,B社のパッケージが,このような自他商品識別機能を有しない表示態様の範囲内でA社のパッケージに接近した表示態様を用いたとしても,そのことが不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争に当たるとはいえない。
「正露丸」の語は,少なくとも「正露丸」の製造販売に携わる取引者の間では,クレオソートを主剤とする胃腸用丸薬(以下「本件医薬品」)の一般的な名称として認識されており,「正露丸」の語が原告製品を指称するものとして,取引者を含む需要者全体に認識されるに至ったものということはできない。
「正露丸」の語は,いずれも本件医薬品の普通名称である。B社の表示(標章)は,B社製品の包装箱正面に普通の毛筆体で漢字「正露丸」を縦書きしたものであり,被告標章は,いずれも本件医薬品の普通名称を普通に用いられる方法で表示したものにすぎないから,本件商標権の効力は,被告標章には及ばない。
「正露丸」は,本件医薬品を指称する普通名称であって,商品の出所表示機能を有するものとはいえないから,不正競争防止法2条1項1号,2号所定の「商品等表示」には該当せず,また,B社が「正露丸」を普通の方法で使用等する行為は,同法19条1項1号所定の除外事由に当たるものというべきである。
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解説
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【混同惹起行為の規制と適用除外】
過去に既に一度取り上げましたが,不正競争防止法2条1項1号は,「他人の商品等表示として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し,他人の商品または営業と混同を生じさせる行為」を不正競争行為として禁止しています。
つまり,広く知られている(周知)氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装に似たものを使い,あたかも自分の商品がそのよく知られた商品と混同させるような行為は許されません。
しかし,形式的にこの混同惹起行為に当てはまっても,不正競争防止法19条1項1号により,差止請求等が認められないことがあります。不正競争防止法19条1項1号は,普通名称又は慣用されている商品等表示を,普通に用いられる方法で使用する行為は,差止請求の対象とはならない,と述べています。
その理由は,不正競争防止法2条1項1号がある「商品等表示」を保護する趣旨が,その「商品等表示」の出所表示機能(需要者にとってどこの事業者の商品であるかが分かるという機能)を保護するところにある以上,普通名称や慣用されている表示は,そもそも自他識
別力がなく出所表示機能を有せず,保護する必要がない上,これを保護するとするなら普通名称の使用を特定人に独占させることになり不都合だからです。
本件「正露丸」についても,裁判所は,取引者の間では,クレオソートを主剤とする胃腸用丸薬の一般的な名称として認識されている,と判断し,これをA社が独占して使用することはできない,と判断しました。
【ブランド戦略と不正競争防止法,商標法】
判決文によっても,A社は,テレビ,新聞といったメディアにおいて「ラッパのマーク」を前面に出して積極的な宣伝を行う(ここ10年間の売上285億円,宣伝広告費60億円)などの戦略の結果,圧倒的なトップシェアを持ち,これを維持してきましたが,A社自身も,「正露丸」の名称やオレンジ色の箱だけでは出所表示機能がないと判断してきたからかもしれません。
もっとも,莫大な宣伝広告費をかけて自社製品を宣伝してきたA社にとっては,他社が同じような外観のパッケージを使うことを自社のブランド名へのタダ乗り(フリーライド)のように感じることも理解できなくはありません。
本件のA社の場合はともかく,一般論として,新しいブランド戦略を始めるにあたっては,不正競争防止法,商標法の規定を念頭に置いてブランドを選定しないと,いざ第三者が類似のブランドなり類似のパッケージを使っても,差止められないということになりかねませんから,十分な注意が必要でしょう。
キャラクター商品の使用権の確認
- 2008.02.15 Friday
- 商標法
- 06:04
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
ある有名な百円ショップY社が,ポケモンキャラクターのフェイシャルステッカー(「TOMY」という標章が付されている)を販売していました。
これに対し,「TOMY」の商標権者である玩具メーカX社が,この商品の販売の差止,謝罪広告,損害賠償等を求め提訴しました。
なお,この商品の販売に関し,Y社は,「ポケモン」の商標権者とは別件ですでに和解しています。
本号では,Y社に,商標権侵害について過失があったかどうかに絞って取り上げます。
Y社は,以下のような理由で過失がないと主張しました。
1)Y社は,仕入先に対し,商品について知的財産権などに問題がないか確認し「X社から使用許諾を得ている」などと報告を受け,これを信用して商品を販売した。
2)本件のような有名なナショナルブランド商品は,通常,メーカーから問屋(仕入先)を通じて,小売店に販売され,小売店が直接メーカーと取引することはない。しかも,メーカーと問屋の著作権等の契約内容は,両者の機密事項として,その開示を求めても,守秘義務を理由に開示を断られるのが通常であったから,過失はない。
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2 判決の概要
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【結論】
裁判所は,販売等の差止,損害賠償,謝罪広告を認めました。
【理由】
Y社の過失を認めた部分について,判決文を引用します。
商標権侵害については,侵害行為者の過失は推定されるものであり(商標法39条,特許法103条),本件において,Y社の過失の推定を覆す事情は認められない。その理由は次のとおりである。
a)キャラクター商品ビジネスについては,キャラクターを使用する商品については,当該キャラクターの権利者と商品化許諾契約書を交わし,権利者から製造数量相当の証紙を発行をしてもらい,商品に証紙を貼ることは通常の方法である(その方法は,商品1点ごとに一つ貼る方法と代表証紙としてインナーカートンに一つ貼る方法がある・・。)。したがって,Y社が,本件商品に証紙が貼られていないことを認識した段階で,その発売元と記載されているX社に対し,本件商品の発売元かどうかを確認するなどすべきだったのであ
り,このような確認をすることが容易であったのに,これをしなかったY社については,通常の取引者として有すべき十分な注意義務を尽くしたものということはできない。
b)Y社は,100円均一ショップなどの名称で商品を販売する全国的にも有名な小売店であり,本件のようなキャラクター商品の販売について,どのような手続が必要であるかは,十分知り得る立場にある。Y社が主張しているように,メーカー等が契約上の守秘義務の関係から,著作権等の契約内容を小売店に開示することはできないとしても,本件のように証紙の貼付のない商品について,許諾契約の内容ではなく,その契約の存否自体の問合せや,少なくとも発売元と記載されているX社が本件商品の発売元かどうかを確認するための問合せについて,発売元であるX社がその回答を留保する理由はない。本件においては,Y社が,発売元であるX社に対しこのような問い合わせをすれば,本件紛争が生じることを未然に防げたのであり,Y社が,本件の権利関係を確認しないで本件商品を販売したことは,通常の取引における注意義務を欠いたものである。
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3 解説
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【キャラクター商品と商品化権】
よく漫画,アニメーション等の主人公や登場人物などのいわゆるキャラクターを利用した玩具,文具等が販売されていることがあります。このように,商品にキャラクターを利用することに関する権利は「商品化権」と呼ばれることがあります。
「商品化権」自体は,法律に規定されているものではなく,一般には著作権又は商標権者といったキャラクターに関連する権利者からそのキャラクターを商品に使用する許諾を受けることによって得られるものです。
この判例で,裁判所は,キャラクター商品化ビジネスで多く行われている取引形態について詳しく述べており,この点は参考となります。以下内容を紹介すると,
1) キャラクター使用を希望する企業は,権利者に対し,商品化についての企画書を提出してキャラクターの使用申込みをし,権利者から提案企画の許諾を得られた場合,権利者と商品化許諾契約書を交わす。
2) ライセンシーは,その後,権利者に対し,製品サンプルを提出し,権利者の監修を受け,権利者からデザイン,色,品質,機能等に修正の指示があった場合は,製品サンプルを指示に沿って修正し,製品サンプルが,権利者の監修に合格すれば,権利者に製造数量相当の証紙発行申請を行う。
3) 証紙は,製品1個につき1枚の証紙を製品のパッケージ(又は製品本体)に貼付するよう商品化使用契約書で義務づけられているのが通常であり,実際のキャラクター商品1個につき,証紙1枚が貼付されていることが多い。権利者は,証紙の発行により,(A)ロイヤルティーの徴収管理,(B)製品の品質の管理,(C)許諾製造数量の管理を行っている。なお,数量が多い商品の場合,当該製品の販売時にインナーカートン(出荷時に段ボール箱の中に小分けして商品を梱包する厚紙でできたカートンのこと)に入れた状態で,商品棚に陳列する販売方法をとるものについては,代表証紙としてインナーカートンに証紙を1枚貼る場合もある。
【キャラクター商品と知的財産権の確認の注意義務】
本件では,小売業者が,仕入先から「権利者から許諾を得ている」という回答を得ていましたが,裁判所は,対象となった商品が,キャラクター商品に多くの場合貼付されている証紙がない商品であったことから,小売業者として権利関係を権利者に直接確認する義務があったと判断したわけです。
このように,この判決は,知的財産権が関係する取引において,販売者が取引の実情を十分に認識した上で,これに応じた慎重な権利確認と権利処理を行うことの重要性を示しています。
特に,知的財産権の侵害においては,過失の立証責任が転換されており,他の場合と比べ侵害者にはより厳しい立証責任が課せられています。一般的には,ある権利侵害行為について損害賠償請求する前提として,侵害を受けた側(賠償を請求する側)が,権利侵害者の側の故意又は過失を立証します。しかし,特許権,商標権等の場合,裁判所が述べているように,これらの権利を侵害した事実があると,侵害者に過失があるものと推定され,侵害者側がこの推定を覆す立証をしないと過失があると認定されます。
知的財産権の侵害においては,他の場合と異なり,裁判所は,侵害者に対し,信用回復の措置(特許法106条,商標法39条等)として,謝罪広告その他必要な措置を命じることができます。今回においても,裁判所は小売業者に,商品の販売の停止と損害賠償に加え,謝罪広告をも行うよう命じる判決を出しており,この点でも,小売業者にとっては手痛い結果となったと思われます。
以上のような知的財産権の侵害に関する特別な規定は,より一層慎重に権利確認を行うべき理由となるといえるでしょう。
事務所移転のお知らせ
- 2008.01.10 Thursday
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- 07:34
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
新事務所では,旧事務所の約3倍弱のスペースとなり,設備の充実によって,依頼者の皆様へもさらに迅速・的確に対応できる態勢が整えられるものと確信しております。また,新事務所も,横浜駅東口より徒歩3分と,旧事務所と同様,交通至便な位置にあります。
当事務所は,これを機に,弁護士及びスタッフ一同,より一層の努力を重ね,知的財産権,企業法務,国際取引,倒産・企業再生,医療薬事問題,その他一般民事法務(不動産,相続,損害賠償等)を中心として,法人及び個人に対するより一層質の高い法律サービスの提供に心がけて参りますので,今後とも何卒倍旧のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
職務発明対価請求と外国特許
- 2006.09.13 Wednesday
- 特許法
- 06:08
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
平成18年09月08日 東京地方裁判所判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060911134416.pdf
【事案の概要】
X(原告)は,製薬会社Y社(被告)の元従業員でした。
Xは,Y社の有していた,テトラゾリルアルコキシカルボスチリル誘導体とそれを含有する医薬成分に関する米国特許権に関する発明について,研究者として化合物の生物活性測定等に関与したものであり,この発明はXを含む複数の発明者による職務発明であると主張し,対価請求の裁判を東京地裁に起こしました。
Y社の主張は以下のとおりであり,主な争点となりました。
(1)外国の特許を受ける権利について特許法35条3項の適用はない
(2)Xは,本件特許権に係る発明の発明者ではない
以下(1)についてのみ紹介します。
【判決の要点】
(結論)外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権について,特許法35条3項の適用はなく,同項に基づく対価請求権は認められない。
(理由)
特許法には,外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権に関する規定がない。
特許権についての属地主義の原則(各国の特許権は当該国の法律によって定められ,特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められるとの原則)によれば,特許権に対して無償の法定通常実施権のような権利を設定することは,日本の特許権についてのみなし得るものであり,特許法35条1項にいう「特許を受ける権利」及び「特許権」とは,外国の特許を受ける権利及び外国の特許権を含まない。
そうすると,外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権についても同条3項が適用されるとは解されない。
注1:ただし,裁判所は,特許法の対価請求だけでなく,Xが予備的に主張した,Y社の社内規程11条1項に基づく実績補償金の請求が認められるか否かも検討しています(請求そのものは結論的に否定)。
注2:外国特許への特許法35条3項の適用の有無については肯定説に立つ裁判例もあります(例えば,東京高裁平成16年1月29日判決「光ディスク事件」,東京地裁平成16年2月24日判決「アスパルテーム事件」)
特許異議申立と権利濫用
- 2006.09.02 Saturday
- 特許法
- 07:02
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
平成18年08月31日 東京地裁判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060831164908.pdf
【事案】
原告は,放電焼結装置に関する特許を取得したところ,被告の異議申立によって当該特許権が取り消されました。原告と被告間には,取引基本契約があり,同契約には「原告被告間における請負又は物品の売買取引に関し,相互の利益を尊重し,かつ信義誠実の原則に従った契約の履行を確保するため,この取引基本契約を締結する」旨の定めがありました。原告は,被告の特許異議申立は,取消し理由もない申立として権利濫用であって原告に対する不法行為となると主張しました。
【判決のポイント】
平成6年改正後の特許法113条は,特許掲載公報の発行の日から6月以内という申立期間内であれば,利害関係の有無を問わず,何人であっても特許異議を申し立てることがで
きるものとしていた。そして,特許法119条,150条,特許法120条から,特許異議においては,職権による審理が許容されていたのであって,当事者の提出した主張や証拠に拘束されることなく特許庁の判断がなされるものであった。
このように特許異議の申立ては所定の期間内であれば何人であってもでき,その審理範囲は当事者の主張立証した範囲に限られるものではなかった。そして,原告被告間の契約の前文に「原告被告間における請負又は物品の売買取引に関し,相互の利益を尊重し,かつ信義誠実の原則に従った契約の履行を確保するため,この取引基本契約を締結する」旨の定めがあるからといって,この契約において特許権の不争条項を特に設けたといった事情もない。
よって,被告による異議申立てを,法によって万人に認められた異議申立権を濫用した
ものということはできず,本件特許異議申立てが原告に対する不法行為に該当するということはできない。
特許”侵害者”の取引先に対する警告書送付と不正競争
- 2006.08.30 Wednesday
- 不正競争防止法
- 07:22
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- by 弁護士 弁理士 石下雅樹
平成18年08月08日 東京地裁判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060809141558.pdf
【事案】
原告と被告は両者ともハンガーの製造販売業者です。
被告が,原告の取引先に対し,原告の製品が被告の特許権等を侵害している旨の警告書を送付しました。原告は,当該警告書の送付は虚偽の事実の告知により原告の信用を毀損するものであるとして,原告が,被告らに対し,不正競争防止法に基づき損害賠償などを求めました。
なお,当該特許権は,無効審決及び審決取消訴訟によって,無効が確定しました。
【判断】
特許権者が競業者の取引先に対する訴え提起の前提としてなす警告も,特許権者が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら,又は特許権者として,特許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのに,あえて警告をした場合には,競業者の営業上の信用を害する虚偽事実の告知又は流布として違法となる。
しかし,そうでない場合には,このような警告行為は特許権者による特許権の正当な権利行使の一環としてされたものというべきであり,正当行為として違法性を阻却されるものと解すべきである。
もっとも,競業者の取引先に対する上記告知行為が,特許権者の権利行使の一環としての外形を取りながらも,社会通念上必要と認められる範囲を超えた内容,態様となっている場合,すなわち,その実質が競業者の取引先に対する信用を毀損し,当該取引先との取引ないし市場での競争において優位に立つことを目的としてされたものであると認められる場合には,もはやこれを正当行為と認めることはできない。
現在の商慣習等を考慮しても,製造業者の取引先に対して権利侵害警告を行うこと自体が特許権者の権利行使として許されないと解することはできない。当該警告が特許権の権利行使の一環としてされたものか,そのような外形を取りながらも,社会通念上必要と認められる範囲を超えた内容,態様となっているかどうかについては,当該警告文書等の形式,文面のみならず,当該警告に至るまでの競業者との交渉の経緯,警告文書等の配布時期,期間,配布先の数,範囲,警告文書等の配布先である取引先の業種,事業内容,事業規模,競業者との関係,取引態様,当該侵害被疑製品への関与の態様,特許権侵害訴訟への対応能力,警告文書等の配布に対する当該取引先の対応,その後の特許権者及び当該取引先の行動等の,諸般の事情を総合して判断するのが相当である。
本件では,被告らが,取引先A社に対して本件各警告書を送付するに当たり,特許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,本件特許権が無効であることを容易に知り得たのに,あえて警告をしたものと認めることもできない。
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